第5話 :山 (by へんしゅうちょ)
ド〜ン!パラパラパラパラ…。
2人の歩く場所からそう遠くない場所で、花火が上がった音『だけ』が
聞こえてきた。
…ドドーン!パラパラパラ…
「あ〜、花火。始まっちゃったね。い、急がないと…。」
あせったオレは、今日子ちゃんの手をさっきより一層強く、グイグイと
引っ張りながら、目指すヒミツのビュースポットへ、急ぎ足で向かった。
花火!花火!花火を見せるぞ!
…別に普段から花火がそんなに大好きってわけじゃない。
いや…。むしろ、花火大会みたいな人の多い場所って苦手なんだ。
『花火を見て感激してくれてる今日子ちゃんの姿が見たい』
ただそれだけの思いで、ここまでやってきた。
もうすぐ…もうすぐだよ。今日子ちゃん。。。
◇ ◇ ◇
…あ!あそこだ!
やっとオレたちは、花火がキレイに見える丘のふもとにたどり着いた。
…で。あと、この小高い丘を登ったら…。花火…が。きれ…い…。
…。
し、しかし…。
…。
小高い【丘】っていうよりも、【山】って感じじゃない?これって…。
オレたちの目の前にあったのは、かなり険しい『急斜面』だった。
『河川敷の土手』が長く続いてる、と言ったらいいだろうか。
芝が植えられて、一見歩きやすそう。でも…。
あ、案外急だよな…。これって。
…オレ一人なら、なんとか登れる。で、でも…。
「えっと…。今日子ちゃん。あのさ、この 丘 を登ったらさ…」
「ち、ちょっとォ!冗談でしょ?!これ、登るの?」
「う…うん。」
「そんなの無理だよぉ…。ゆかたなのに…。他の場所にしようよ。。。」
「そんなこと言うなって。せっかくでっかい花火を見せてやろうと思ってさ、
ココまで来たのに…。」
「別にいいよぉ。大きくなんかなくったって。。。
そんなのどうでもいいからぁ…。」
「!!」
…オレがせっかく今日子ちゃんのためにと思って考えてきたのに…。
『大きくなんかなくても…』『どうでもいい』なんて…。
あんまりじゃんか…。
「な…なんだよぉ!せっかく連れてきてやったのに。
あと、ここさえ登れば見えるんだぜ!
ったくぅ…。…ゆかたなんか着てくるから…。」
「!!」
………。
突然。今日子ちゃんが下を向いてしまった。
お、オレって、まずいこと言っちゃったかな…。
「きょ、今日子ちゃん…。ち、ちょっとどうしたんだよ…?」
顔を上げた今日子ちゃんの目には、今にもこぼれ落ちそうな涙…。
ドドーン!…パラパラパラ…。
花火の音を耳の奥で感じ取りながら、オレはぼんやり考えた。
…
『あ、あれ?…。ひょっとして…ムード満点??』
(つづく)
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