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浴衣deデート♪ ストーリー



第4話 :価値観 (by 片瀬 萩乃)


 

「…な、な〜んだ。遅いな〜と思ったら…

 ゆ、ゆかたなんか着てきたのかぁ…。」

 

「えっ?!…。」

 

耳を疑ってしまった。

『今日子ちゃん、とっても似合うよ』
なんて言ってもらえるって期待してたのに…。

ばっかみたい…。

 

「あ、も、もう、花火が始まっちゃうよ。今日子ちゃん。行こうか!」

涼くんは、あたしのゆかた姿にほとんど目を向けることなく
歩き出そうとしていた。

あたしも、黙ったまま涼くんの半歩後ろを歩き始めた。

 

『あたしのゆかた姿って、似合わない?』

言ってやりたかった。
でも、そんなこと聞いて、もしも……。
そう思うと、怖くて聞けなかった。

涼くんのために、大変な思いをしてゆかたを着たのに。


顔を覗きこむと、真正面を見てニヤニヤ…
でも、それを必死に抑えようとする、涼くんがいた。

 

「涼〜。なにニヤニヤしてんのよ。キモイってばぁ…。

 もうちょっとさ、ゆっく…」

「べ、別に、ニヤニヤなんて…。 …なぁ。もうちょっと早く歩こ。」

 

涼くんは、あたしの手を取り、歩くスピードを早めた。

 

何か面白いものでもあるのかと、涼くんの視線の先をみると
ゆかたをサラリと着こなしている大人の女性の姿が…。





……。

ゆかたに興味がないんじゃなくて
『あたしのゆかた姿』に興味がないだけなんだ…。

(もう…帰りたい。)

目をこするフリをして、頬に流れそうになる涙をぬぐった。

 

------------------------------

 

「お、オレさぁ。結構いい場所、知ってるんだ。 そこから見るとさぁ、
んもう、むっちゃでっかい花火がさぁ、どどーん!って見えるんだぜ!」

「う…うん。」

「でさぁ、それがさぁ…。」

 

笑顔で、話す涼くん。




涼くんの、その笑顔って大好き。
でも、今はその笑顔すら見ることが出来なかった。

 

信号待ちの交差点。
涼くんに会う前の信号待ちではなかった、激しい痛み。

(さっきまで、止まってる時は平気だったのに…)

気付かれないように足元を見ると
足の皮がめくれて真っ赤になってる…。

涼くんの手を「ねぇねぇ」と揺らすと
優しい顔であたしを見た。

 

「あのね…。ゆかた慣れてないから…ゆっくり歩きたいなぁ、なんて。」

「う〜ん、もうすぐ着くから、頑張って歩こうよ!」

「……う、うん」

 

あたしは、鼻緒が擦れる痛みを我慢しながら
涼くんの手をぎゅっと握る。

涼くんは、「今から行く場所、かなり穴場でさ〜」なんて
楽しそうに話を続ける。

あたしは、気持ちを汲んでくれない、そんな涼くんに
少し苛立ちをおぼえはじめていた。


(つづく)

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