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浴衣deデート♪ ストーリー



第6話 :意地 (by 片瀬 萩乃)




…ドドーン!パラパラパラ…

 

「あ〜、花火。始まっちゃったね。い、急がないと…。」

「えっ…また急ぐの?…んもう…やだ…」

ド〜ン!パラパラパラパラ…。

あたしの声は、花火の音と一緒に消されてしまい
涼くんの耳には届かなかった。

 

涼くんに引っ張られるように、あたしは急ぎ足で進んだ。
痛い足を引きずりながらも、周りのカップルを見ると
寄り添いながら花火を指差して楽しんでいる。

(あたしも…あんなふうに楽しみたかった…)

 

あたしにとって、場所なんて問題じゃなかった。

涼くんと一緒に花火が見られるだけで…

それだけで、嬉しかったのに。。






悲しみが苛立ちへと変わっていく、あたしの気持ち。
その苛立ちは怒りとなり、頂点に達したのだった…。

そう、涼くんの言う

『秘密のビュースポット』

を目前にした最後の"難所"へ到着した時に…。


◇   ◇   ◇


「えっと…。今日子ちゃん。あのさ、この 丘 を登ったらさ…」

(丘?!どうみても山じゃない!)

 

あたし達二人の前には、『山の急斜面』と言っても
大袈裟ではない道が続いていた。

河原敷の土手のように、芝が植えられているから
下駄をぬげば、なんとかなるようにも見えるけど…。
自由の利かないゆかたで登るのは、あまりにも困難だった。

 

「ち、ちょっとォ!冗談でしょ?!これ、登るの?」

涼くんは「う…うん。」と、少し申し訳なさそうに返事をした。

それもそのはずだ。
『パンツにスニーカー』
いつものあたしではないのだから。

 

「そんなの無理だよぉ…。ゆかたなのに…。他の場所にしようよ。。。」

 

「そんなこと言うなって。

 せっかくでっかい花火を見せてやろうと思ってさ、

 ココまで来たのに…。」

 

「別にいいよぉ。大きくなんかなくったって。。。
そんなのどうでもいいからぁ…。」

 

「!!」

 

あたしの言葉に、いつも温厚な涼くんの目がつり上がった。

「な…なんだよぉ!せっかく連れてきてやったのに。

 あと、ここさえ登れば見えるんだぜ!」

……。

 

大きな花火なんて興味ない…。
涼くんと一緒に花火が見たいだけなのに…。

この気持ちを伝えようと、口を開いた瞬間…。

 


「ったくぅ…。

…ゆかたなんか着てくるから…。」

 


この一言にあたしは、出かかった言葉を飲みこんだ。

……。

ひ、ひどい…。

誰のために、苦労してゆかたを着たと思ってるのよ。
誰のために、痛い思いしてココまで来たと思ってるのよ。

あたしの足の痛みもお構いなしに、どんどん歩く、涼くん。
アナタのために頑張ってるのに…。

 

悔しくて、哀しくて、許せなくて…。
うつむくあたしの目には、涙があふれてきた。

 


「きょ、今日子ちゃん…。ち、ちょっとどうしたんだよ…?」

 

顔をあげ、今にも涙がこぼれ落ちそうな目で
涼くんを睨みつける、あたし。

そんなあたしを見ても、何一つ「申し訳ない」と言う
気持ちは表してくれなかった。

 

その瞬間。『プチン…』と、あたしの中の何かが切れた。

 

解ったわよ…。
涼くんがそこまで言うなら…

 

登ってやろうじゃない!


(つづく)

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